MECとは?基礎知識から活用シーンまで合わせて解説 | docomo MEC® | 低遅延・高セキュアなドコモの法人向けクラウドコンピューティング MECとは?基礎知識から活用シーンまで合わせて解説

MECとは?基礎知識から活用シーンまで合わせて解説

公開日:2025-04-30

MECとは?基礎知識から活用シーンまで合わせて解説
5G時代において、通信環境は飛躍的に発展しました。その中で、MEC(Multi-access Edge Computing)という技術が注目を集めています。

本記事では、MECの基本概念と具体的なユースケース、docomo MECでの導入事例を詳しく解説します。

MECとは?

MECは「Multi-access Edge Computing(マルチアクセス・エッジ・コンピューティング)」の略称です。
従来のクラウドサービスとは異なり、端末に近い場所にサーバーを設置して通信の遅延を低減する「エッジコンピューティング」の一種です。特にモバイル端末やIoT機器に特化した技術として開発されました。
5Gの高速・大容量・低遅延という特性を最大限に活用し、リアルタイム通信や高セキュリティな通信を実現することができます。

また、MECはETSI(欧州電気通信標準化機構)でも標準化された技術及び規格となっており、リアルタイム通信や高セキュリティな通信へのニーズに応える技術として注目を集めています。

docomo business watchより引用

技術と仕組み

従来のクラウド環境では、スマートフォンやIoTデバイスから送信されたデータがインターネットを通じて遠くのデータセンターまで往復していました。このため、通信距離が長くなり遅延が発生し、リアルタイム性を求められる領域への適用が難しいという課題がありました。
一方、MECではネットワークのエッジ(端末に近い場所)にサーバーを設置しています。データの移動距離が大幅に短縮されるため、通信の遅延を最小限に抑えることができます。
処理結果がすぐに端末へ返されるため、リアルタイム性が求められるアプリケーションでも快適に動作できます。5Gの特性と組み合わせることで、その効果はさらに高まります。

(後述するdocomo MECなら、5G/LTE環境のいずれも快適にご利用いただけます)

MECの特徴

 1. リアルタイムな通信
データ処理をエッジで行うため、MECではミリ秒単位のリアルタイム処理が可能です。
データがインターネットを経由しない独自のネットワーク内で処理されるため、インターネットが混雑する時間帯においても通信の遅延が削減されます。自動運転や遠隔医療など、即時の反応が必要なサービスで活用できます。

 2. 高セキュリティな環境
MECでは通信がインターネットに出ないため、外部からの攻撃リスクが大幅に低減されます。
インターネットを経由しない通信により、機密性の高いデータ処理も安全に行うことが可能です。セキュリティが特に重視される環境において大きなメリットとなります。

 3. ネットワーク負荷を軽減
大量のデータがインターネットに出ることなく、エッジで処理・保存できます。
これにより、全体のネットワーク効率が向上し、より多くのデバイスが同時に接続しても安定した通信が実現可能です。

なぜMECが注目されているのか

MECという技術は、一部の先進的なユースケースに限られた存在でしたが、今では多くの業界でMECの必要性が急速に高まっています。
その背景には、社会全体で進むデジタル化やリアルタイム性の高い通信への需要、そしてセキュリティへの関心の高まりといった変化があります。
ここでは、MECが注目を集める3つの主な理由について解説します。

 1. IoTデバイスや生成AIによるDXの加速
産業用IoTデバイスの普及と生成AIによるDXの加速により、膨大な量のデータ通信が発生するようになりました。
この膨大なデータ量をクラウドや既存のオンプレミスサーバーだけで処理するのは次第に困難になってきました。この課題を解決する有力な選択肢として、MECが注目されています。

 2. リアルタイム処理の需要の高まり
自動運転の実用化や遠隔手術支援などの先進的な取り組みが急速に進展しています。
これらの取り組みではミリ秒単位での応答時間が求められるため、従来のクラウド環境では対応しきれないケースが増加しています。このようなリアルタイム通信が必要なユースケースでMECは活用されています。

 3. セキュリティ対策の強化ニーズ
データ保護に関する規制強化や技術発展により、情報セキュリティ対策は企業の最重要課題の一つとなっています。
MECはインターネットに出ない閉域通信を実現するため、機密データを扱う業務や重要インフラなどセキュリティを重視する分野からの需要が高まっています。

MECの主要ユースケース5選

リアルタイム性、高セキュリティ、ネットワーク負荷軽減といったMECの特性は、実際のビジネスシーンでどのように役立つのでしょうか。ここからは代表的な5つのユースケースを紹介します。

1.遠隔制御

建設業界や医療業界では、深刻な人手不足が課題となっています。この問題を解決する手段として期待されているのがクレーンなどの遠隔制御です。

MECはタイムラグのない通信を求められる遠隔操作に最適な環境を提供します。通常のクラウド環境では数百ミリ秒の遅延が生じる場合でも、MECでは数十ミリ秒まで短縮可能。オペレーターは違和感なく正確な操作ができるようになります。
MECダイレクトを活用したクレーンの遠隔制御のイメージ

MECダイレクトを活用したクレーンの遠隔制御のイメージ

【活用シーン】
 1. 建設業界
・重機の遠隔操作により作業員が現場に行かずに操作可能
・人手不足解消と作業効率向上に貢献

 2. 医療業界
・リモートでの遠隔手術支援や問診で若手医師の技術支援
・専門医の知見を遠隔地でも活用可能に

【詳細はこちら】遠隔制御のユースケース

2.コンテンツ配信

動画や音楽などのコンテンツ配信では、大容量データの効率的な転送が課題となっています。

パブリッククラウド利用料の1〜2割を占めるといわれるデータ転送料(エグレス料金)が、MECでは発生しません。MECのエッジサーバーの特長を活かし、オリジンサーバーの負荷を抑えた効率的なネットワークが構築可能です。
docomo MECにおけるコンテンツ配信の構成図

docomo MECにおけるコンテンツ配信の構成図

【活用シーン】
 1. 広告配信、店舗サイネージへの動画配信
・タクシーなどの移動体への動画広告配信
・コンビニ、アパレルなどに設置される店舗サイネージへの動画配信

 2. カラオケへのコンテンツ配信
・楽曲配信をMECで行うことで転送料が不要に
・MECダイレクトのSIMを活用した配信端末の自社管理が可能

【詳細はこちら】コンテンツ配信のユースケース

3.コネクティビティ

「docomo business RINK®」のインターコネクト機能「Flexible InterConnect(FIC)」を利用することで、企業のパブリッククラウドやオンプレミス環境とモバイルIoTを閉域で接続できます。

FICを活用することで固定回線を引かずにモバイル回線で閉域通信環境の構築が可能になり、従来なら通信環境の制約でできなかったシステム連携も実現します。
docomo MECにおけるコネクティビティの構成イメージ

docomo MECにおけるコネクティビティの構成イメージ

【活用シーン】
 1. 移動型拠点の閉域ネットワーク構築
・仮設倉庫や事務所など拠点増減が頻繁なケースに最適
・モバイル回線なのでシステムへのアクセス環境を柔軟に構築可能
・固定回線工事不要で短期間にネットワーク構築

 2. BCP対策
・固定回線環境のバックアップとして利用することで通信継続性の向上
・有事の際も業務継続を可能に

【詳細はこちら】コネクティビティのユースケース

4.映像伝送

MECは高精細な映像伝送の無線化に最適なネットワークです。

GPUを活用した映像データ分析や、データ転送料の発生しないブロックストレージへのデータ保存など、映像の利活用にも最適な環境を提供します。4K/8K映像などの大容量データもリアルタイムな通信で伝送できます。
MECダイレクトを用いた映像伝送

MECダイレクトを用いた映像伝送

【活用シーン】
 1. 医療業界
・遠隔手術支援や問診における補助映像のリアルタイム伝送
・遠隔地からの精密な診断や手術支援が可能に

 2. 放送業界
・カメラと中継車をつなぐケーブルの無線化
・生中継における機材の軽量化を実現

 3. 警備業界
・警備ロボットやカメラの映像伝送
・GPU利用による異常検知の自動化
・広域施設の安定した映像品質での監視

 4. 製造業・エネルギー業
・プラント内の機密情報も安全に伝送
・ドローンによる管理監視の効率化

【詳細はこちら】映像伝送のユースケース

5.ドローン活用

ドローンを活用した点検・監視・測量などの作業は、人手不足や危険作業のリスク低減に貢献します。

MECを活用することで、ドローンからの高精細映像をリアルタイムに伝送し、即時分析や判断が可能になります。GPSの精度向上やドローンの遠隔制御安定性も高まり、より高度なドローン活用が実現します。

さらに、MECの閉域通信による高セキュリティな環境構築により、ドローンが撮影する工場内部や重要インフラなどの機密性の高い映像データも安全に扱うことが可能です。
インターネットを経由せずにデータをやり取りするため、情報漏洩リスクを大幅に低減できます。

【詳細はこちら】ドローン活用のユースケース

docomo MECの活用事例

ここまで紹介してきた遠隔制御、コンテンツ配信、コネクティビティ、映像伝送といったユースケースは、すでに多くの場面で活用されています。
それでは、実際にdocomo MECを導入した事例を見ていきましょう。

カラオケの配信基盤(コンテンツ配信)

導入背景
カラオケサービス市場では、音楽業界のヒット曲の多様化により、配信する楽曲や映像の数が年々増加しています。また、カラオケが幅広い世代に親しまれる中、健康効果への注目も高まり、介護施設や自治体関連施設などへの導入が進んでいます。

このような背景から、第一興商様は、多様な顧客ニーズに対応するために閉域内の安全な環境で効率的に配信する基盤を構築することを目指していました。

期待される効果・今後の展開
・セキュアな大容量データの取り扱いが可能に
 楽曲や映像を閉域内の安全な環境で効率的に配信することが可能となります。

・コンテンツの高速ダウンロードの実現
 エッジサーバーとしての活用により、各種コンテンツの高速なダウンロードが可能となり、カラオケ利用者の体験向上が期待されます。

・設置時の可搬性向上と配信の高速化への対応
 今後、docomo MECや5Gを活用し、通信カラオケDAMの設置時の可搬性の向上や楽曲・映像配信の高速化が進められることで、新たな価値の創出が検討される予定です。

【詳細はこちら】第一興商様の導入に関するプレスリリース

テックメタバース(コネクティビティ)

導入背景
長岡技術科学大学様では、次世代の教育環境として仮想空間を活用したテックメタバースの構築を進めていました。

この取り組みでは、ロボットの遠隔制御や大型機器のシミュレーションといった実験を仮想空間上で行う必要があり、通信の安定性とセキュリティが重要な要件となっていました。
そこで、安定した低遅延通信と高セキュリティな閉域通信環境を実現するため、docomo MECの導入が決定されました。

導入効果
・低遅延かつ高セキュリティな通信環境の実現
 docomo MECの導入により、ユーザー端末とサーバー間を閉域で接続し、ロボットの遠隔制御などの実験環境が整備されました。

・クラウドサービスとの安全な連携が可能に
 AWSとの閉域接続を可能にする「Flexible InterConnect(FIC)」の活用により、既存のクラウド環境と安全に連携し、教育・研究用のネットワーク環境が構築されました。

【詳細はこちら】長岡技術科学大学様の事例

生中継におけるワイヤレス伝送(映像伝送)

導入背景
福岡放送様では、毎年開催される「博多祇園山笠」の中継において、中継車からカメラ設置場所までの映像・音声伝送にケーブルを使用していました。
しかし、ケーブルが4車線の道路を横断する必要があり、ケーブル高架作業の手間や、参加者や見物客の安全性確保などの課題がありました。

これらの課題を解決するため、docomo MECを活用したワイヤレス伝送の導入が検討されました。

導入効果
・ワイヤレス伝送の実現による課題の解消
 docomo MECの導入により、中継車とカメラ設置場所間の映像・音声のワイヤレス伝送が可能となりました。
 その結果、ケーブル敷設の手間や安全性の課題が解消されました。

【詳細はこちら】福岡放送様の事例

DXを加速させるdocomo MEC

これまで紹介してきたように、MECは遠隔制御や映像伝送、コンテンツ配信、閉域通信環境の構築など、さまざまな業務で活用が進んでいます。
特にdocomo MECでは、5G時代に求められるリアルタイム性とセキュリティ、柔軟なネットワーク構成を両立できる点が大きな特長となっています。

docomo MECの5つの特徴

 1. ドコモネットワーク内の全国8か所に設置
docomo MECは全国8か所に拠点を設置。最寄りの拠点を選んで利用できます。地域ごとに最適な拠点を選択することで、災害時のリスク分散にも対応可能です。

 2. モバイル回線でMECを利用できる(MECダイレクト)
docomo MECの大きな特徴が「MECダイレクト」です。専用SIMを利用することで、端末が移動してもMECサーバーが継続して利用可能です。

また、固定光回線やVPN、専用線の工事が不要になるため、導入期間短縮とコスト削減を実現します。

【詳細はこちら】MECダイレクト

 3. データ転送料がかからず、為替の影響を受けない料金体系
docomo MECでは、パブリッククラウドで発生するデータ転送料(エグレス料金)が発生しません。
また、国内サービスのため為替変動の影響を受けない安定料金体系で、長期利用でも予算計画が立てやすく、コスト面での不安を解消できます。

 4. 商用における豊富な利用実績
docomo MECは遠隔制御や映像伝送などの幅広い用途で、300を超える利用実績があります。

 5. 一元対応
docomo MECなら、回線とクラウドのお申し込み窓口が一元化しています。回線とクラウドの提供会社が分かれていないので、ワンストップでお申し込みや保守サポートが可能です。

まとめ

MECは5G時代の通信技術として、リアルタイム性、高セキュリティ、ネットワーク効率で大きなメリットをもたらします。遠隔制御、コンテンツ配信、コネクティビティ、映像伝送などの分野で活用が進み、様々な業界のDXを加速させています。

MECは今後も様々な産業分野で活用が広がり、新たなビジネスモデルやサービスを創出する原動力となるでしょう。

docomo MECは、モバイル回線で利用可能なMECダイレクトなどを中心にMEC基盤を提供しています。よろしければぜひご検討ください。

docomo MECのサービス紹介

リアルタイム通信×高セキュリティ

docomo MEC

docomo MECは、ドコモネットワーク内に配置したMECサーバーと、サーバーへのダイレクトなアクセスを可能にする回線サービス(MECダイレクト)を提供するサービスです。
インターネットに出ない通信により高セキュリティかつスムーズな環境を実現します。

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